2018.01.4

【短歌しない?】『荒井の妄想一首評』:掌編(カフェにて)

【1】

別れ話をしましょう。

ふたり膝を突き合わせて話し合いましょう。

週末の午後、静かなカフェの窓際、そこの丸テーブルに座って。

 

出会った時はこうだったけど、だんだんと気持ちが変わっていったんだと。

そんなメッセージのやり取りも、あったような気がする。

よくある話。ぜんぶがぜんぶ上手くいくという方がおかしい。

分かっているんだけど、分かっているんだけど。

わたしがいくら反対しても、あなたは去っていくでしょうし、でもわたしは忘れることはできないでしょう。「忘れることはできない」というのは、未練があるからまたいつかどうのこうの、ということではなくて、記憶からは消せない、少なくとも自分の意思では消せないということ。だけどそんな説明をしようがしまいがあなたにはもはや関係なく、わたしもそれを一から説明しようという気はない。

 

どれくらいの時間が経っていたのか分からないけど、わたしの目の前にいる人が、わたしを説得しているようで、何か日本語のような言葉を発している。

わたしが悪いのでしょうか、いま、わたしがあなたにご迷惑をお掛けしているのでしょうか。よくわかりませんが、たぶんそうなのでしょう。

 

このマグカップに入っているのは、たしかアメリカンコーヒーのホット。

それとおんなじものがあなたの前にも置いてあって、手を伸ばせば届く距離だからあなたのアメリカンコーヒーを飲み干すことだってできる。

だけど、わたしのはもう冷めきっているから、あなたのもそうなっている気がするし、何よりこのお店のアメリカンコーヒーは美味しくない。

だから注意されなくたってあなたのコーヒーを飲むつもりなんかありませんので、ご心配いただかなくても結構です、というよりも、目の前にいるはずのあなたはなぜこうも遠くにいるように見えるのでしょうか。

 

 

【2】

話はまとまったんだか、そうでないのか、結局分からず終いだった。

会う直前まであれだけメッセージのやり取りをしたし、さっきもカフェで散々話したけど、これで良かったのだろうかと、僅かながら迷いもある。

 

うまく行っている時は良い。そりゃそうだが。

メッセージ画面には短い言葉たちが、緑と白のブロックとなり行き交って、行き交っておれたちはやってきたわけである。

歴史を作ってきた、というと大袈裟か。でも、まあそんな感じだ。

 

最近はだいぶ状況が変わってきったように思う。

長いメッセージが飛んでくる。とにかく長い。どうにも忙しくてまともに返す暇がなかったので、後回しにしていた。

何が原因なのかなんて分からない。

落ち着いてきたのでちゃんと返信をしてみると、おれもおれで意外と長くなってしまったが、とにかく言いたいことは色々言ったような気がする。

 

緑、緑、緑。

白、白、白。

緑、白、白、緑、白、白、白。

さらに、白。

待て待て。話が進まないじゃないか。

 

月並みな展開で、月並みな言葉だけど、終わりにしよう。

会ったはいいが、まともに話を聞いている様子には見えない。

コーヒーは不味いし。

 

緑、緑、緑、緑、緑、緑、緑。

おいおい、周りの人も店員もチラチラこっち見てるぞ。

分かってもらおうとすればするほど、なんかおればかりが悪いみたいになってないか。

 

●文/歌人・荒井貴彦
大学一年生の時に短歌を詠み始めました。主な源泉は寂しさです。 最近はもはや、短歌にすがりついている感すらありますねえ。 「荒井の随筆」というブログで自作短歌を公開中です。