2018.03.18

お題にこたえて⑬:たむりんの「ボブディラン、フジロック参戦決定!」

ボブ・ディランがフジロックに参戦する。ローリング・ストーンズ、ポールマッカートニーが「生きた化石」ならば、ボブは「転がる化石」。ボブは今も転がり続け、今日も風に吹かれている。比喩とかじゃなく、マジで。ところで君はボブの現在を知っているだろうか?

ボブは風に吹かれ過ぎてとんでもない方向へ転がっている

最初に言っておく。風に吹かれ過ぎたボブはフジロックで代表曲、「風に吹かれて」をやらない可能性がある。そして転がり過ぎているため、かの名曲、「LIKE a Rolling Stone」もやらない可能性がある。やったとしても転がし過ぎバージョンでやる可能性が高い。最近のボブがどれくらい風に吹かれ過ぎているのかを観てみよう。

強風に煽られ、岸壁を落下し続ける石は削られ、原型をとどめていない。ボブはフジロックで「岸壁の母」を歌う可能性がある。ボブがフジロックで「岸壁の母」を歌う可能性はない。いくらボブでもそこまで転がり過ぎていない。だがしかし、岸壁の母を歌う事はなくても、今のボブはかつてのボブではない。

ボブは恐らく、新曲を歌いまくる

ではここで、2016年、4月4日、東京・渋谷Bunkamuraオーチャードホールでのセットリストを見てみよう。

Set 1:
1 Things Have Changed (『Wonder Boys』 2001)
2 She Belongs to Me(『Bringing It All Back Home』 1965)
3 Beyond Here Lies Nothin’(『Together Through Life』2009)
4 What’ll I Do(『Shadows In The Night』2015)
5 Duquesne Whistle(『Tempest』 2012)
6 Melancholy Mood『メランコリー・ムード』2016)
7 Pay in Blood (『Tempest』 2012)
8 I’m a Fool to Want You(『Shadows In The Night』2015)
9 That Lucky Old Sun(『Shadows In The Night』2015)
10 Tangled Up in Blue(『Blood on the Tracks』1975)

Set 2:
11 High Water(『Love and Theft』2001)
12 Why Try to Change Me Now(『Shadows In The Night』2015)
13 Early Roman Kings(『Tempest』 2012)
14 The Night We Called It a Day(『Shadows In The Night』2015)
15 Spirit on the Water(『Modern Times』2006)
16 Scarlet Town(『Tempest』 2012)
17 All or Nothing at All(『メランコリー・ムード』2016)
18 Long and Wasted Years(『Tempest』 2012)
19 Autumn Leaves(『Shadows In The Night』2015)

Encore:
20 Blowin’ in the Wind
21 Love Sick(『Time Out of Mind』 1997)

はっきり言って知らない曲ばかり、新曲ばかりなのだ。その昔、チャップリンはこう言った。

「最高傑作? それは次作だ」

ボブのスタンスはチャップリンのそれに近い。問題は、音楽と映像作品は違う、という事ではないだろうか。音楽表現は生身、肉体的であり、恐らく多くのボブファンは「今のボブ」に困惑する。「ボブよ、あんたぁもうノーベル文学賞も取ったじゃないか、大人しく微風に吹かれてコケむす石になれよ。新曲なんか一曲も知らねーし、かつての名曲もなんだかもう原型がねーよ。一緒に歌いてーのに歌えねーよ」。それが素直な感想ではないだろうか? ボブはバカではない、そんな声も耳に届いている事だろう。だがしかし、ボブはバカなのだ。ノーベル文学賞という権威などどこ吹く風、ボブは今日も猛吹雪の中、傾斜90度の直滑降に挑む。結果、ライブで演奏するのは新曲ばかり、ヒット曲は原型なし。

ボブよ、あんたぁどこまでボブなんだ

ボブディランがフジロック参戦? 是非レジェンドを一目観たい! 甘い甘い、覚悟なされよ。ボブはボブであってボブでない。そりゃそうだ、風に吹かれ、転がり続ける男が同じ場所にとどまっている訳がない。

だからこそ、ボブはボブであってボブなのだ

この一見矛盾した普遍性を受け入れられる者だけがボブを観に行けばいい。安直なノスタルジーを求めるならかつてのボブをYouTubeで観ればいい、流転し続ける万物の深淵に揺らぐノスタルジーに触れたい者だけが今のボブを観に行けばいい。

 

ボブはいつだって「今」なのだ。今のボブを観ろ。今のボブを感じろ。変わり続けるボブに向かい合え。

実はボブは何一つ変わっていない。なぜならボブは最初からこう歌っていたのだから。

The answer is blowin’ in the wind
答えは風に吹かれている

●作 / コラムニスト・タムリン

タムリン 1982年 2/4、江戸川沿いで育つ かしの木園出身。お母さんスウェーデン人 英検サンキュー♫ ヘラジカLOVE♡ 最近たまに喫茶店のマスター、aurora choppers、ブル、The R.O.Xさんの準レギュラー、S.G.G.K 東大宮代表。好きな寿司ネタは鯖 好きな焼き魚はサバ 好きな缶詰もさば!