ダダンダンダダン。
ダダンダンダダン。
I came back.
さて、周りの誰も食前のお祈りをしないことに気づいたあと、その子は以下のいずれかの行動をとる(僕の勝手説)。
1.ヒーロー型。気にせずお祈りする
・・・ない。まずない。
2.妥協型。お祈りしない
大抵これだな。うん。
3.折衷型。1秒で終わらせる
一瞬目を閉じて、大急ぎで「お食事感謝します、アーメン」と唱える。
折衷型は、発音すると「オシャメン」ぐらいのスピードだな。
これは「御赦免」つまり「これで許してください」という意味でもある(わけない)が、いずれにせよ、これは厳格なクリスチャン家庭でよく躾けられた子供に見られる、異なる文化を自分の中で共存させようとする精一杯の試みだ。
・・・はい、僕です。
「ヒーロー型」の名称は、映画「ダウンタウンヒーローズ」(1988)に由来する。
いいよお、この映画。おススメ。終戦直後のバンカラな旧制高校生たちのスカッと爽やかな物語。薬師丸ひろ子がメッチャかわいい。それはともかく、学生寮の食堂で、ひもじい食事を前に祈りを捧げるクリスチャンに学友が言う。
「これが感謝して食うほどのものか」
しかし彼は意にも介さずこう言うのだ。
「文句言いながら食べるのと感謝するのと、どっちが美味いかという問題ですね」
実に、ヒーローと呼ぶに相応しい(ちなみに彼が主役ではない)。
まあ、高校生ともなればそのくらいの分別が出てくるだろうけど、小学校低学年のうちは、まだまだ葛藤があるもんなのね。
僕の場合、幸い周りが優しかったのか、それでからかわれたとかはなかったけどね。
それでも自分が周りと違うんだってことは意識するわけで。
でもやがて、なあんだ、みんなだってお祈りするじゃんって気づけば、何てことないんだけどね。
アナタは見たことがないか。
PK戦であと一人で決まるというときのスタンドの観客を。
アナタは見たことがないか。
アポロ13号が大気圏に再突入するのを見守る人々を。
アナタは見たことがないか。
合格発表の掲示板の幕が外される直前の母親を。
そう、これはみんな、祈っているんだよ。
病気になって健康のありがたみを意識するように、人は絶体絶命のときに「神」というものを意識するんだろうね。
それを普段の、日常生活の中で意識しているのが、食前のお祈りなわけね。
じゃあまた。
オッちゃんでした!
●文/オッちゃん
クリスチャン家庭に生まれ、高校時代に洗礼を受ける。50にして天命を知る。某プロテスタント教会所属の現役クリスチャン。趣味は読書、映画、80s、モノ書き。愛読書はもちろん聖書。編集長とは不思議な赤い糸で結ばれている。