2018.02.26

台湾映画の傑作!『クーリンチェ少年殺人事件』

台湾の映画監督、楊徳晶(エドワード・ヤン、1947-2007)による1991年の作品『クーリンチェ少年殺人事件』。多くの映画監督が絶賛し、台湾映画史上に残る傑作と言われながらも初上映以来、ほとんど観る機会がなく、「幻の作品」となっていました。しかし去年、4Kレストア・デジタルリマスター版が制作されたことにより、様々な映画館で上映され、改めて注目が集まっています。

あらすじ

1961年に実際に起こった事件が基になっているこの作品は、夜間中学に通う不良グループの対立を中心に、思春期特有の残酷さが描かれています。主人公の小四(シャオス―)が学校で出会った小明(シャオミン)という少女に恋心を抱くことによって不良グループの対立はますます過激になり、ラストの悲劇的な結末へと向かっていくのです。

長尺236分

岩井俊二監督の『リリイ・シュシュのすべて』や塩田明彦監督の『害虫』のように、どこにでもいる普通の少年・少女が思春期特有の繊細さや暴力性によって破滅へと向かっていく映画はこれまでにたくさん作られてきました。そうした映画は、少年・少女たちの世界にスポットを当てて描かれているがゆえに、彼らの周囲を取り巻く大人の世界はあまり描かれていないことが多い。そんな中で、『クーリンチェ少年殺人事件』は、少年・少女たちの世界を中心に、周囲を取り巻く大人たちの世界もしっかりと描いています。そのためには、236分という時間が必要だったんですね。

日本統治時代のアメリカ文化の影響

日本家屋、日本刀、エルヴィス・プレスリーの歌、賛美歌、バスケットボール、コンバースのスニーカー。登場人物達の日常生活の中に出てくる様々なアイテムが、60年代の台湾における日本統治時代からの影響、そして憧れをもって受け入れられていたアメリカ文化の影響を象徴しています。単なる青春映画に留まらず、60年代当時の台湾の歴史や文化、社会の状況なども鮮明に描き出すことに成功しているのです。監督のエドワード・ヤンは、上海に生まれ、2歳のときに台湾に移住、そしてアメリカ留学を経験しています。こうした複雑なバックグラウンドを持つ監督自身の記憶が強く投影されているのでしょう。

渋谷アップリンクでの上映は終わってしまいましたが、昨年にはDVDが発売されています。より鮮明になったといわれる夜の闇のシーンを、ぜひ確かめてみて下さい!

●文/いちまり